さよならドビュッシー   (中山七里著)‏ [小説]

「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。

基本的にミステリー好きではないが、「このミス」作品には面白いものが多いのと、
欧州に住むようになってからクラッシックに触れる機会が多いので、買ってみた。

結構話題になったのは知っていた。
だが、正直、読む前は「どんなもんかなぁ?」という期待と懐疑心があったので、同著者作の「おやすみラフマニノフ」は買わなかった。

。。。。

買っておくべきだった。

次回帰国時には間違いなく買う。

資産家の祖父の下、何不自由なく過ごしていた一家に起こる大火事。

全身やけどにもかかわらず奇跡の生還をとげ、全身の皮膚を移植しリハビリを行いながらコンクールを目指す少女。

それだけだと、いかにも「感動の話」になりそうだが、そこにミステリーが絡むので、お涙頂戴にはならず、かえってリアリティーが出てくる。

一方でミステリー自体が主題で進むわけではないので、ミステリーはちょっと・・・と、言う人にも楽しめる。

そして何より、やはり音楽の表現が圧巻だ。

ピアノが奏でる旋律が目に浮かぶようであり、ドビュッシーやベートーベンなど作者の思い・背景なども詳しく描かれる。

この本に沿ったCDがあればいいのに、と思う。

それでいて、やはりクラッシックはあまり・・という人にも読めるのだ。

もちろんミステリーとしても秀逸。

最後のどんでん返しはまったく予想がつかない衝撃だ。


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左岸 上・下   (江国香織著‏) [小説]

「冷静と情熱のあいだ」に続く辻仁成とのコラボレーション。


もう随分前の話だが、「冷静と情熱のあいだ」は辻仁成バージョンを読んで面白かったので
今回も辻仁成の書いた方の「右岸」を買おうと思った。
ところが、探したのがドイツに戻る成田空港の本屋で「左岸」しかなく、こちらを買った。

前作もいつか江国バージョン読んでみたいとおもってそのままになっていたし。。。

失敗した。

最近、こういった作品が多いような気がするのだが、
感想分かいっ!?っと思ってしまった。

もちろんこの本も賛否両論あるだろうし、好きな人も大勢いるだろう。

けど、個人的にはあまり面白くなかった、というか合わなかった。

まぁ、そもそも今回の設定自体が「?」という気もするので辻仁成バージョンの「右岸」を読んでみたいとも思わないなぁ。

前作に比べて売り上げはどうなんだろう?

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プラチナデータ   (東野圭吾著)‏ [小説]

いったい東野氏の頭の中はどうなっているのだろう。

今回のテーマは「徹底的に合理的な操作手法をする人物が、その方法によって自分自身を犯人だと断定せざるを得ない状況に陥ったらどうなるか」

物語が進むにつれて「あ~この方法があったか」と思うのだが、東野氏はそんなに単純ではない。

さらにその先に「仕掛け」が待っている。

今回は上記のテーマに中に遺伝子、しいては政府や官僚の関係する陰謀まで絡んでくるのだ。

単行本としては結構分厚い(約500ページ)方だと思うが、やはり一気に読んでしまった。

ちなみに今回、帰国中誰かと本の話をしていたときに「東野圭吾は最後が暗いので敬遠する人も意外といる」という話を聞いた。

もともと、かなり暗い、心が病んでる系が好きな自分にとっては東野氏の本がどこか暗いとは思ったこともなかったが。

どちらにしても氏の人気は間違いなく、この本も2013年映画化されるそうだ。

彼の本の映画化率がものすごく高いのもわかる気がする。

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スギハラ・サバイバル   (手嶋龍一著‏) [小説]

いわずと知れた元NHKワシントン特派員の著者による「インテリジェント小説」

ほとんどノンフィクションと言ってもいいかと思うが本人(だけ)がフィクションと言い張っているので一応ノンフィクションということで。

スギハラはこれまたいわずと知れた「杉原千畝」

戦時のリトアニアでポーランドを中心とする東欧諸国から逃れてきたユダヤ人に日本への出国ビザを与え続けた「日本のシンドラー」

このリトアニア経由という背景もすごい。

当時独ソ不可侵条約という破られることを前提とした条約の下、ポーランドを含む東欧諸国はドイツとソ連に”勝手に”分断された。

ドイツの支配下では当然ユダヤ人の未来はなく、ソ連の支配下でもシベリアで死ぬまで強制労働するしかない絶対絶命の危機に面していたユダヤ人。

そういった中、当時ポーランドの都市であった国境の町ヴィリュニスがリトアニアに「投げ与えられた」。

ヒトラーとスターリンがやがてソ連に呑み込まれる運命の小国の歓心をいっときだけ買おうとしたのだ。

その、「ほんの一瞬」=ヴィリュニスがリトアニア領になり、リトアニアがソ連の支配下になる前のほんの一瞬に6000人のユダヤ人がスギハラ・ビザにより命を救われた。

彼らを「スギハラ・サバイバル」と呼ぶそうだ。

この本はそのスギハラ・サバイバルで生き延びたユダヤ人とリーマンショックや9.11テロの裏を描いている。

以前同著者の「ウルトラ・ダラー」を読んだ時にも思ったのだが、NHKワシントン特派員ともなるとこれだけ情報が集まるものなのだと驚くと同時に感動する。

逆にこういった「インテリジェンス」を持った人たちとのコネクションがなければ勤まらないのかもしれない。

BBCの海外特派員の多くが実際「インテリジェント・オフィサー」といわれているくらいだから当然といえば当然か。

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贖罪   (湊かなえ著) [小説]

映画化もされた「告白」の著者。


この作者の構成力はものすごいと思う。

子供の頃のある殺人事件に巻き込まれた少女たちが、「贖罪」に囚われ、それぞれ人を殺してしまうと言う

驚愕の内容なのだが、全く関係のないそれぞれの殺人がすべて1つの心理=贖罪から起こっていることが独

白・手紙などで語られる。

その独白・手紙がまた恐ろしく迫力があり、読者に迫ってくる。

このあたりは「告白」に通ずるものがあるのではないだろうか。

そして驚くべきが、日本の作品にはあまりない、結末が読者にゆだねられるパターンなのだ。

4人の少女の独白の後、その「悲劇の連鎖」の原因とも言うべき、最初の殺人事件の被害者の母の独白が始まるのだが、

少女の独白の中で明らかになるある謎と共に、母親の最期の行動も結末が描かれていない。

それでいて、中途半端な印象はなく、なんとも言いがたい余韻が心に残る。



この作品もドラマ化されたそうなのだが、WOWOWでのドラマ化ということもあり、監督は昨今の「過剰なまで

の描写・説明」されるテレビドラマとは一線を画した作品にしたのだそうだ。

一方で、最期に独白する被害者の母親は作中それぞれの場面で本作とは違い「行動」をしているのだそう。

出演者も魅力的な俳優陣なので、ぜひ観てみたい。

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白磁の人   (江宮隆之著) [ノンフィクション]

この時代には稀有な本物の国際人・淺川巧を描いたノンフィクション。


民族運動の父と呼ばれる柳宗悦に多大なる影響を与え、哲学者の阿部能成は彼の死を「人類の損失」とまで記した。

日本が朝鮮(今の韓国)を併合して4年後の1914年、淺川巧は林業技師として山々を緑に戻す指名で朝鮮に渡る。
と、言っても荒れ果てた山々は日本・ソ連による伐採によるものだ。

軍はもちろんのこと日本人のほとんどが朝鮮人を蔑視し、言葉を含め日本の風習や価値基準を押し付ける時代。

結果、ご存知のように今も彼の地では日本語を話す老人は多い。

そのような時代に、彼は朝鮮語を学び、白磁に代表される朝鮮の文化や工芸品の素晴らしさを見出していった。

日本人・朝鮮人のわけ隔てなく、誰にでも穏やかに平等に接して、そのことで日本軍の兵隊などに虐められる様なことがあっても生涯そのスタイルを貫いたのだ。

一部の「朝鮮寄り」が気に入らない日本人を除き、彼に接するすべての日本人・朝鮮人から愛され、
彼の家はいつも物売りの老婆から娼婦、人夫、または学者に至るまで国籍・性別・階級を超えた人が集まっていたそうだ。

そして、まるで「生き急ぐ」かのように、本業の林業技師として山々を巡り緑を取り戻す作業と共に、白磁の研究・収集・論文、またその他の工芸品の発掘など、
ほとんど寝る間もない生活を続けた結果、わずか40歳の若さでこの世を去ることとなる。

彼の葬儀には当時の朝鮮における日本人の葬式ではありえないそうだが、大勢の朝鮮人が少しでも棺を担ぎたいと詰めかけ長蛇の列が出来た。

途中出くわした日本軍が威嚇などで解散させようとした際も、当時はどのような理不尽な要求も飲まざるを得なかった朝鮮人が全く言うことを聞かなかったという。

今でこそ、平等を叫んだり、またその通りに行動することはたやすい(その気があれば)が、この時代に
淺川巧のようにその意志を貫くのは容易ではないだろう。

ちなみに、今でも、朝鮮人やアジアの人々に対して平等に接している日本人は決して多くはないのではないかと思う。

そして彼らに対して偉そうな態度を取る人たちはえてして欧米人に対する態度は弱い。

少し話はずれるが、日本帰国時によく感じるのだが、日本人は(主に男性)すれ違う際によけず、わざと肩をぶつけるような人が非常に多い。

ところが欧米人と一緒に歩いていて観察すると、彼らに肩をぶつける人は皆無である。

正直、この国はなんなのだろう、どうなっちゃたんだろう?と思ってしまう。


以前にも記載したかもしれないが、中国の友人はやはり中国で接する日本人が大嫌いだったのだそうだ。

理由は「とにかく横柄で偉そう」だから。

到底、淺川巧には足元にも及ばないが、そんな彼と無二の親友になれ、「日本人に対する印象が変わった」と言ってくれたことは今でも自分の中で誇りである。

そして今回、韓国人の人と一緒に飲む機会があった。
その彼が言ってくれたのだが、「やさしくしてくれる人は多いけど、あなたの様に対等に接してくれる人は少ない。ぜひ次回帰国時も会いたい」と。
お世辞かもしれないが、とても嬉しかった。

今後、そのように思ってくれる人を一人でも多く作りたいと思っている。

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影法師   (百田尚樹著)‏ [時代小説]

日本帰国中、電車の中で読んでいたのだが、久々に泣きそうになった。



時代は明記されていないが、上士・中士・下士に別れていたある藩での話なので
江戸後期あたりだろうか。

頭脳明晰で剣の達人、学問でも剣術でも誰もが一目置く中士の子・彦四郎と下士の子・勘一。

勘一がその才を認められ藩校に入るのだが、下士は上士と口も聞けない時代、
他の子供たちがなかなか認めようとしない中、彦四郎だけは何の分け隔てもなく接するばかりか
勘一の才能を誰よりも認める。


そして勘一は下士から筆頭家老にまで上り詰めるのだが、一方、誰からも将来を嘱望されていた
彦四郎は最後は不逞浪人となり不遇の最期を遂げる。

不遇の最初のきっかけとなった事件=確かな腕を持つ彦四郎が果し合いで「卑怯傷」と言われる背中への傷を負ったのは何故か

筆頭家老となった勘一が「竹馬の友」彦四郎の行方を追う中で、それらの謎が明らかになっていく。


彼らの最初の出会いがまた良い。

“「泣くな」父が討たれた日初めて出会った少年は言った。「まことの侍の子が泣くな」”

勉学でも剣の腕でも適わない、誰よりも優れていた彼の言葉がその後の勘一の一生を支えるのだ。



今の時代にはない、男の生き様、友情。

しかもいかにも狙った友情物語ではなく、
開拓事業など、勘一の成し遂げた功績、成長が描かれる中で、読者も気づかない友情がそこここにちりばめられているのが、最後になってわかるのだ。

同じ武士の友情が描かれていた浅田次郎氏の「壬生義士伝」以来の感動作である。

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甘粕正彦 乱心の曠野   (佐野眞一著)‏ [ノンフィクション]

「満州の夜は甘粕が支配する」と言われた甘粕正彦に関する話。

ノンフィクションの物語と言うよりはかなり「研究本」に近い。

そういった意味では個人的に少し期待はずれ。



以前から当時の満州や上海にはすごく興味を覚えている。

「男装の麗人」と言われた川島芳子や、「李香蘭」こと山口淑子が活躍したのもこの時代の満州だ。

その他にも今に残る「魔都」上海の租界など、世界中の表と裏の顔が一同に会し、“何があってもおかしくない”時代と場所。

当時生きていて、そこで暮らしていたらさぞかし面白かっただろうと思う。



本書は「大杉栄殺人事件」から大きく人生を狂わされた甘粕の真の姿を様々な証言や資料から解き明かそうと言う趣旨。

資料・証言などすべて客観的事実(証言の内容は事実かどうか保証できないが)に基づいて検証されている。但し、作者・佐野氏は大杉事件も甘粕の犯行ではないというスタンスで、かなり甘粕側に寄り添った内容となっている。



こういう本を読んでいるとつくづく中立と言うのは難しいな、と思う。

先にも述べたように佐野氏はかなり甘粕擁護派で、後書きにも「すべて客観的事実」と書いているが、

証言によっては「それをそう取りますか?」と言う様な内容もある。

しかし、逆に言うとこれだけの資料を調べる情熱はやはり対象人物に相当な興味(好意にせよ、悪意にせよ)がないと無理であろうから、そういう意味ではどうしても一方の側、大抵は対象人物側に寄ってしまうのはどうしようもないのかもしれない。

戦国時代の武将にせよ、幕末の志士にせよ、である。

そう言えば以前幕末の志士について、「竜馬が行く」など坂本龍馬から入った人は新撰組はあまり好きではないと言っていた。



この本では何故甘粕が「満州の夜の帝王」と言われるようになったのか。

どのような暗部や裏(関東軍の表に対し)を支配していたのか。

などは残念ながらあまり書かれていないが、やはり興味深い人物なので、次回はもっと「活動」に焦点を当てた本を読みたいと思う。

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ささやかな永遠のはじまり   (盛田隆二著) [小説]

なんなんだ、これは?

出版社に勤める25歳の女性が、エリート男性との結婚を控え公私共に充実した毎日を過ごしていたが
結婚直前、その男性の女性問題が発覚。
で、破局。
傷心のなか、編集長である上司の優しさにほだされ、不倫。
その上司が不治の病に侵されるなか、女性は妊娠。
でも、幸せ。
ハッピーエンド。

盛田隆二氏の本は「夜の果てまで」など、結構面白かった印象だったので、買ってみたが、
正直「なんじゃ、これ?」
最後の方はもう飛ばし読み。
個人的には上記の感想のほか何も残らなかった。

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数字のウソを見破る法   (雑学チーム101) [その他]

世の中にあふれる「数字」のカラクリを解説したもの。
個人的にはもっと「分析」=どのように数字を操作すれば「衝撃的な」数字が出るか
同じ数字でもこう見せることで宣伝効果が倍増する、
と言うようなものを期待していたが、どちらかと言うとそれぞれの数字の「背景」を解説したものが多い。
そういう意味では期待とは違ったが、それぞれのカラクリは面白い。

では、対照的で面白かったものを。

2010年、日本の犯罪検挙率は31・4%だったそうだ。
1980年代は60%台後半だったので、一見検挙率が大きく落ちている様で「警察はなにやってんだ?」と言う声が聞こえてきそうだが、そうではないらしい。
実は分母である「認知件数」が大幅に増えたのだそうだ。
その認知件数増加も犯罪事態がそれほど大幅に増えたわけではなく、「ストーカー事件」に代表されるように警察の職務怠慢が問題になり指摘されるようになったため、積極的に被害届けを受理するようになったのだ。
さらに、以前は検挙率を上げる為、軽犯罪に重点を置いたりしていたらしいのだが、
凶悪犯罪に重点をシフトした為でもあると言う。
実際、凶悪事件の検挙率に限っては98・2%だそうだ。
これなんかは、行政としては珍しく、表面的でない改善の例だろう。

一方、一時期よく話題になっていた「待機児童」に関してはまったく逆だ。
社会問題化し、対策を迫られた政府は2001年「待機児童ゼロ作戦」なるキャンペーンをぶち上げた。
結果、リーマンショックによる不況により共働きが増えるまでは毎年順調に減少していた。
そう言えば一時期ほど騒がれなくなったな、政府もやるじゃん、と思ってはいけない。
なんと、厚生労働省は「ゼロ作戦」発表に前後して「待機児童」の定義そのものを変えてしまったのだそうだ。
それ以前は国の工費で運営される「認可保育所」に入所申請したのに入れない子供を待機児童としたのに対し、
発表前後にはそれを「認可外保育所(助成金がないので高い)」に入っていたり、「他に入所可能な認可外保育所などの施設があるのに、特定の保育所を希望して待機している」子供は待機児童に含まなくなったのだ。
ひどい話だ。
こんなのは国レベルの詐欺以外の何者でもないのではないだろうか。

そのほか、不動産の「駅から徒歩〇分」の定義 (日本は規制が厳しいのであれはウソではないそうだ)
や、TOEFLの結果、日本はアジア29カ国中28位と発表されたが、日本の英語力は本当にアジア最低なのか、
など。

軽く読めるが、結構ためになって面白い本。

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