甘粕正彦 乱心の曠野   (佐野眞一著)‏ [ノンフィクション]

「満州の夜は甘粕が支配する」と言われた甘粕正彦に関する話。

ノンフィクションの物語と言うよりはかなり「研究本」に近い。

そういった意味では個人的に少し期待はずれ。



以前から当時の満州や上海にはすごく興味を覚えている。

「男装の麗人」と言われた川島芳子や、「李香蘭」こと山口淑子が活躍したのもこの時代の満州だ。

その他にも今に残る「魔都」上海の租界など、世界中の表と裏の顔が一同に会し、“何があってもおかしくない”時代と場所。

当時生きていて、そこで暮らしていたらさぞかし面白かっただろうと思う。



本書は「大杉栄殺人事件」から大きく人生を狂わされた甘粕の真の姿を様々な証言や資料から解き明かそうと言う趣旨。

資料・証言などすべて客観的事実(証言の内容は事実かどうか保証できないが)に基づいて検証されている。但し、作者・佐野氏は大杉事件も甘粕の犯行ではないというスタンスで、かなり甘粕側に寄り添った内容となっている。



こういう本を読んでいるとつくづく中立と言うのは難しいな、と思う。

先にも述べたように佐野氏はかなり甘粕擁護派で、後書きにも「すべて客観的事実」と書いているが、

証言によっては「それをそう取りますか?」と言う様な内容もある。

しかし、逆に言うとこれだけの資料を調べる情熱はやはり対象人物に相当な興味(好意にせよ、悪意にせよ)がないと無理であろうから、そういう意味ではどうしても一方の側、大抵は対象人物側に寄ってしまうのはどうしようもないのかもしれない。

戦国時代の武将にせよ、幕末の志士にせよ、である。

そう言えば以前幕末の志士について、「竜馬が行く」など坂本龍馬から入った人は新撰組はあまり好きではないと言っていた。



この本では何故甘粕が「満州の夜の帝王」と言われるようになったのか。

どのような暗部や裏(関東軍の表に対し)を支配していたのか。

などは残念ながらあまり書かれていないが、やはり興味深い人物なので、次回はもっと「活動」に焦点を当てた本を読みたいと思う。

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