影法師   (百田尚樹著)‏ [時代小説]

日本帰国中、電車の中で読んでいたのだが、久々に泣きそうになった。



時代は明記されていないが、上士・中士・下士に別れていたある藩での話なので
江戸後期あたりだろうか。

頭脳明晰で剣の達人、学問でも剣術でも誰もが一目置く中士の子・彦四郎と下士の子・勘一。

勘一がその才を認められ藩校に入るのだが、下士は上士と口も聞けない時代、
他の子供たちがなかなか認めようとしない中、彦四郎だけは何の分け隔てもなく接するばかりか
勘一の才能を誰よりも認める。


そして勘一は下士から筆頭家老にまで上り詰めるのだが、一方、誰からも将来を嘱望されていた
彦四郎は最後は不逞浪人となり不遇の最期を遂げる。

不遇の最初のきっかけとなった事件=確かな腕を持つ彦四郎が果し合いで「卑怯傷」と言われる背中への傷を負ったのは何故か

筆頭家老となった勘一が「竹馬の友」彦四郎の行方を追う中で、それらの謎が明らかになっていく。


彼らの最初の出会いがまた良い。

“「泣くな」父が討たれた日初めて出会った少年は言った。「まことの侍の子が泣くな」”

勉学でも剣の腕でも適わない、誰よりも優れていた彼の言葉がその後の勘一の一生を支えるのだ。



今の時代にはない、男の生き様、友情。

しかもいかにも狙った友情物語ではなく、
開拓事業など、勘一の成し遂げた功績、成長が描かれる中で、読者も気づかない友情がそこここにちりばめられているのが、最後になってわかるのだ。

同じ武士の友情が描かれていた浅田次郎氏の「壬生義士伝」以来の感動作である。

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