沙門空 海唐の国にて 鬼と宴す 巻の一・二   (夢枕獏著)‏ [小説]

前回日本帰国時、巻の一・二と置いてあったので全2巻と思って買った。
で、第2巻を読み終えたがどうもすっきりしないので、ネットで調べたらどうやら全4巻あるらしい。
しかも、販売元が徳間から角川に変わってるようだ。
映画化の為かな?

空海を描いた小説はあまり多くないので読んでみたが、非常に魅力的な人物のようだ。

遣唐使として唐に渡るのだが、彼の目的は20年かけて密教を学ぶこと。
しかし、彼は20年もかけていられないと、「いかに早く習得するか」を考える。
早く帰国したりすると軽くて流罪、最悪死罪の時代にである。
密教を取得するには青龍寺の恵果和尚に教義を受けなければならないのだが、僧にもかかわらず、
「金で買うも、己が才によって密を得るも、恵果和尚どのがそれでよいとお思いになり、このおれもそれでよいと思うなら、本当に、それでよいのだ」と20年分の生活費をはたいて密を買うことを考える。
その為に、当時横行していたまやかしや呪詛による現象を解決して「倭国からきた空海という僧はなかなかのものであるという評判を前もって造っておく」のだ。
また、「死者のために念仏を唱えても本人はもう死んでるのだから意味がない。生きている者のためにこそ念仏がある」などと、非常にドライな考え方で面白い。
物語は化け猫や、庸(皇帝の墓に埋めてある兵士の像・始皇帝のものが有名)が土から出てきて暴れたりするのを解決していくのだが、このあたりはこの小説がフィクションである所以だ。
しかし、それぞれの出来事がやがて1つの要因=楊貴妃の最期につながっていくあたりは非常に面白い。

それにしても、この時代の唐には驚かされる。
100人に1人は外国人の国際都市なのだ。
しかも、これは現代でもありえないのだが、この時代の唐、長安は外国人でも能力があれば
政治の中枢に抜擢される ということである。
例えば阿倍仲麻呂がそうなのだそうだ(小説にも重要人物として登場する)
18歳の時に唐に渡り、以後45年、唐朝諸官を歴任し玄宋天皇(楊貴妃の夫)の側近の高官にまで上り詰めるのだ。
このあたり、現在の中国の原型を見る気がするのは自分だけだろうか。

現在に通じる話としては空海その人も、現在でも成功する人物だな、と思う。
先に書いたように非常にドライな面もあるが、人に対しては非常に思いやりがあり、善悪を含め「いろいろな」人がいることをおもしろい、と好ましく捉えている。
また、常に冷静で、危機に面した際にも常に落ち着いており、動じない。
このあたりは卓越した僧たる所以であろう。

巻の二では最期に阿倍仲麻呂が「日本語」で書いた手紙が謎を解く大きな鍵として出てくるところで終わってしまっている。
そしてその手紙の中の最大の謎(楊貴妃の最期にまつわる話)が謎のまま終わっていて、非常に続きが気になる。。。。。


虹色ほたる 永遠の夏休み 上下   (川口雅幸著)‏ [小説]

昭和の夏がここにある。

簡単に言ってしまうとタイムスリップものだが、そこには焦点は当てられていなく
ある夏とその思い出が綴られている。

そういえば、小学生の頃は近くの川でも蛍が見れたことを思い出した。
蛍と言うと清流にしかいないイメージだが、うしがえるが生息してるようなどぶ川だったのに何故いたのだろう?
10年ほど前、東京から京都に引っ越したとき、マンションの前を流れる高瀬川にも蛍が生息してるのを見て感動したけど、翌年からだんだん見なくなった。(ちなみに出身も京都だが、住んでたのは別の場所)

いつも不思議に思うのだが、「昔の光景」は何故誰にとっても懐かしいのだろう?

例えばこの物語の舞台はなんとなく自分の小学生時代と被るような気がするが、例えば全く経験のない戦前や戦後・昭和初期なんかの作品を観たり読んだりしても、何故か懐かしく、心が温かくなる。
遺伝子のなせる業だろうか。
あ、でも宮崎駿の「紅の豚」なんかも舞台はイタリアなのになんか心地よい郷愁を感じたなぁ。
作者が日本人だから?

作品内容は不必要な仕掛けもなく、どストレート。
最後は少しありがちな気がする(個人的にはその前の章で終わってもよかったのでは?と思う)が、
素直な物語。

2012年5月12日から映画封切なのだが、日本のアニメってやっぱりすごいな、と思う。
確かにこの物語は下手な子役を使うより、アニメにした方が余計な感情を持たず、原作のまま「素直に」観れるのではないかと思う。
MANGA が世界標準語となりつつあるが、他の国のアニメはやはり往々にして子供向け、若しくは幼稚な感じがする。
先日、ある記事を読んだのだが、反日教育を施している中国でさえ、アニメ・マンガ好きにアンケートを取ると
「反日」のパーセンテージがものすごく下がるのだそうだ。
まぁ、一方で電車の中でもずーっとマンガを読んでるサラリーマンはどうかと思うが。。。

ほのぼのと安らぎたい時にお勧め。

聖女の救済   (東野圭吾著)‏ [小説]

ご存知「ガリレオ」シリーズ最新作。


ホント、この人(東野氏)の頭の中はどうなってるんだろう?と思う。

と、同時にこの人は別の仕事をしていてもきっと大成功していたんだろうな、と思った。



と、言うのも逆転の発想が出来るのだ。

今回の作品は言ってみれば「殺さない殺人」。



以前に読んだ本にもあったが新しい商品は逆転の発想から生まれることが多い。

有名なところでは格安航空会社。

「飛行機とは?」から浮かぶこと・・・空を飛ぶ、客を乗せる、エンジンなど、を否定していくのである。

そしてそれまで当然だった機内食を否定、CAによるサービスも極限減らすなどにより生まれたのだ。

予断だが最近「立ち乗り」近距離便の話も出たが、結局安全性の問題で見送られたそうだ。

そのうち、「預け荷物なし・手荷物1個まで」みたいな航空会社が出るかもしれない。



さて、本題に戻るが、今回の作品も最初から犯人はわかっているのだが

(なにせ、冒頭で犯人が毒の入った袋を持って「これを使う時が来た」と決意するのだから)

完璧なアリバイがあり、ガリレオ先生の科学的実験もことごとく失敗する。

そこには完全な逆転の発想が存在する。



東野氏、これを書いてしまうと次からどうするの?

って思うけど、そんなのは素人考え。

きっとまた凡人には予想も付かないストーリーが紡ぎ出されるのだろう。

池上彰の大衝突   (池上彰著) [経済]

サブタイトルは「終わらない巨大国家の対立」

1. 中国 v.s. アメリカ
2. ロシア v.s. アメリカ・EU
3. EU v.s. アメリカ
4. サウジアラビア v.s. アメリカ
5. 中国 v.s. 日本

の5つの章に分かれている。

さすがにうまいな、と思ったのは、各章において冒頭
20XX年X月4日 ワシントン発外電によると・・・
20XX年X月5日 北京発外電によると・・・
と、ニュース形式で可能性をシミュレーションし、その後、解説に入る。
そして章の最後はそれぞれ「3つの数字で対決の行方を読み取る」形式で完了。

池上氏は本当に教えるのがうまい人なんだと思う。
あれだけTVで引っ張りだこになるのもわかる気がする。

中でも面白かったのはやはり最近旅行に行き、来月は出張予定で妙に身近なロシアと、まさに自分が住んでいるEUの話。
ロシアで反プーチンの指導者たちが「謎の」死を遂げていることは周知の事実だが、ここまで統制されているとは日頃気づかない。
また、ロシア(プーチン)躍進に資源の高騰が大きく関わっていることもよくわかった。
そして、資源が今後も順調に産出されるとは限らない為、北極その他、資源が眠っている土地の取り合いが起きていることなど。
もっとも驚いたのはこの時代、先進国にも関わらずロシア男性の平均寿命が59歳と言うこと。
そして、軍隊の質が恐ろしく落ちている = 30%が精神的に不安定、10%がアルコール依存症、15%が病気または栄養不良、25%が親の顔を知らない、と言う事実。
共に、貧富の差が大きく関与しているそうだ。
一部の富裕層を除き、貧民層はそこから脱出出来ない為、アルコールや暴力による殺傷、自殺で平均寿命が下がっている。
そして、軍隊に入隊するのは「こね・賄賂」が使えず兵役を免れることが出来ない層の人たちばかりと言う現実。。。

EUに関しては現在欧州危機などと騒がれているが、池上氏は基本的なところでは比較的楽観視と言えるのではないだろうか。
EUはアメリカに対抗出来る最大唯一の国(組織)として、将来的にはアメリカを凌駕する可能性にも触れられている。
実際に石油などを含む国債取引においてドル建てではなくユーロ建てへの切り替えがかなり進んでいるそうだ。
今回の危機を乗り越えた暁にはさらに国際的な地位を高めるのではないかと、確かに氏の数字や解説を読んでいると思えてくる。
個人的には最近欧州関連は暗い話題ばかりなので、うれしかった、と言うかほっとした。
また、EUは世界で初めて“戦争によってではなく”国の主権を他へ譲った初のケースであり、なんら関与してないけど、住んでる者としてなんだか誇らしい。
やはり自国での戦争(アメリカはない)を多く経験しているからこそ生まれた発想であるのかもしれない。
そして今や誰もEUの加盟国と戦争したくないもんね。イコールEUを敵に廻すことになるから。

ちなみに10年・20年で見て唯一「かなり厳しい」と指摘されていたのがv.s.中国の日本。
確かに中国が台頭してきてから、国際的地位、政治力、したたかさ(国としての)等、勝てたことも、勝てそうに思えたことも一度もないもんね。
弱腰外交なんてもう使い倒されてきた言葉だけど、国内で足の引っ張り合いばっかしてるようじゃ、さもありなん。。。
この本でもブッシュのアホさ加減について記載されてて、笑っちゃうけど、よく考えれば公約をすぐ翻したり、やめる前に無理やり実績作って自己賞賛したりって、どこかでよく聞く話のような・・・・

WILL   (本多孝好著)‏ [小説]

どこかで読んだ事あるような気がすると思ったら、
以前に読んだMOMENTの姉妹版とでも言うべき作品だった。

MOMENTでは病院でバイトをする「僕」が末期患者の願いを叶える話。
WILLは葬儀屋を継いだ「私」が死者やその周りの人々の「思い」を届け、慰めていく話。

それぞれの作品にそれぞれの主人公が登場する。
(どうりでこの「葬儀屋」知ってる気がしたわけだ)

寂れた商店街の葬儀屋を継いだ主人公・森野。
女性なのだが、ものすごく口が悪い。
近所の商店のおばちゃんに「待ってるから、早めにな」などと言ったりする。(職業は葬儀屋である)
でも、本当は心優しく、仕事にも誇りを持っており、悼んだ相手=死者に対する冒涜や思いを踏みにじることは許さない。
と、言っても、最初は「冒涜」と思っても、ここに登場するそれぞれの「事件」の主人公はすべて心優しき人たちだ。
人よりも優しいゆえに「問題」を抱えてしまったり、起こしてしまったりするのだ。

人はさまざまな「思い」を残し亡くなっていく。
そして残された人たちもさまざまな「思い」を抱えてその後の人生を生きていく。

読後、優しい気持ちになれる作品。

完全なる証明   (マーシャ・ガッセン著)‏ [ノンフィクション]

クレイ数学研究所「ミレニアム会議」において100万ドルもの賞金がかけられた数学会の未解決の問題7つのうちの1つ、「ポアンカレ予想」を証明したロシア人数学者の話。

7つの問題は永遠に、若しくは今世紀中に解決されることはないだろうと思われていた。
以前読んだ「フェルマーの最終定理」にしてもそうだが、解決・証明されないのに、「正しい」とされる定理が、一般人の自分にはよくわからない。
が、そこが数学の面白さたるや所以であろう。

2002年11月、1人のロシア人数学者、グレゴリー・ペレルマンがポアンカレ予想の証明をインターネット上に公開した。
もちろん過去に何人も「ポアンカレ予想を証明した」と発表する者は大勢いたが、ことごとくその証明が不備であることが判明している。
そしてこのポアンカレ予想に関して最後に大きな進展があったのはこの20年前、アメリカ人リチャード・ハミルトンと言う数学者によって問題を解くための方向性を示したものだ。
しかし、当のハミルトンも自分のプログラムはあまりにも複雑すぎてこれ以上は進めないと考えるに至っていたという難問。

ペレルマンのインターネット上の発表はやがて完全な証明であることが明らかになる。
しかし、ミレニアム会議は規定として「査読つきの専門誌」に論文を発表すること・掲載から2年を待機期間とし、その間に世界中で数学者が論文を精査して証明に間違いがないかを判定する、というもの。
これは数学会では当然で、インターネットだけに発表することが普通は考えられないことなのだそう。
にもかかわらず、「ペレルマンが“証明した”と発表すると言うことは確かに証明されたのであろう」と言う何人かの数学者の推薦により、多くの数学者・専門家の手によってこの証明が正しかったことが判明する。
そして、クレイ数学研究所は自ら定めた規定をまげてまで、ペレルマンに100万ドルを授与することを決めるのだ。

しかし、である。
ペレルマンは発表後、他の数学者が証明を綿密に分析した論文を検討することはおろか、それについて論評することすら拒否したのだ。
そして、世界中の一流大学から殺到したポストの申し出も全て断り、100万ドルの賞金も辞退する。
さらに、数学における最高の名誉であるフィールズ賞さえも辞退し、それ以降、数学者ばかりか、ほとんどすべての人との連絡を絶ってしまったのだ。

この本は何故彼がポアンカレ予想を証明できたのか、何故賞金を辞退したのか、そして何故数学を捨て、自分がそれまで住んでいた世界をも捨ててしまったのか。
その謎を周りの人のインタビューや生い立ちによって解いていく。
ちなみに彼は世捨て人なので、彼自身へのインタビューは数少ない彼の居場所を知る人を通じて何度も挑戦したのだが、不成功に終わっている。

彼の数学者としてのあまりにも完璧な頭脳(初めて出た数学オリンピックにおいて唯一4問すべて正解したとか)を読んでいると、もし彼がこの世界を捨てなかったとしたら、もしかして他の7つの問題の1つくらいは彼が証明していたのではないかと思う。
一方で、彼のその特異な行動、それはあの時代のソ連と言う体制に深く根ざしている様だ。
そういう意味では数学に全く興味がない人も、旧共産時代の東欧・ソ連に関する読み物としても十分面白い。

つい最近、サンクトペテルブルグに行ったのだが、表面上は今はその面影は全くない。
しかし、ペレルマンを苦しめた体制が崩壊したのはほんの最近のことだと、そして2002年に数学の大問題を証明した人がその体制に大きな影響を受けているのだと、その事実を目の前にすると愕然としてしまう。

3匹のおっさん   (有川浩著) [小説]

最高に面白い。
この手の本(と、言ってもジャンルを特定しにくいが)では、「夢をかなえる象」以来の面白さだと思う。

物語は還暦を迎えるが「おじいちゃん」と呼ばれたくない3匹の「おっさん」が主人公。
この「おっさん」たちがキャラが立ってて、なんともいえないいい味を出している。
さらに1話毎に入る(前6話)挿絵がまた秀逸なのだ。
たとえば、「おっさん」でいたい3匹のうち1匹が孫に着こなし=シャツをズボンに入れないとか=を教えてもらった次の挿絵ではちゃんとシャツが出てたりする。
思わずニヤッ、である。

また、この孫が後半に入るに連れて重要、且ついい味を出してくるのだ。
見た目はかなりチャラいのだが、意外と心があったり、人の気持ちを汲むことが出来たり。

さらに、もう1匹のおっさんの娘がまた「いいコ」なのだ。
しかもかわいい(らしい)

つまり主要な登場人物がすべて愛すべきキャラで、それが物語り全体をやさしく包んでいる感じ。

物語自体は3匹のおっさんが町の治安を守る、と言うか、それが暇つぶしでもあるのだが、
武闘派2匹と知能派1匹のバランスがまた絶妙だ。
ただ、その内容はいい意味でどうでもよくなるほど、主人公たちが魅力的なのだ。

ちなみに故児玉清がラジオで絶賛していたそうで、その模様が巻末に「あとがき」として掲載されているのも、「いい感じ」である。

レッドゾーン 上・下   (真山仁著)‏ [小説]

ドラマ・映画化された「ハゲタカ」の続編。
ハゲタカ、ハゲタカⅡで残された謎も解明される。

今回の買収攻防は自動車産業、そして舞台は中国。

日本の産業の旧態依然とした構造は毎回描かれるが、今回は中国と日本の政府の差、中国の資金力や共産社会特有の公私混同などが横軸で描かれ非常に面白く、且つ、興味深い。
巻末に作者と池上彰との対談が納められているが、現実が物語を追いかけているようなところがあり、怖いものがある。
また、舞台を中国としながらも、一方で作者は日本人が描きがちな「中国(人)の悪の部分」にも警告を与える。
反日感情もメディアが報じているだけで、中国人はもっとはるかにバランス感覚にすぐれている、と。
同時に池上氏の本も読んでいるのだが、中国は管理相場制の為替も関係して外貨保有高がはんぱじゃない。
そしてこの「レッド・ゾーン」でも描かれているが、国有系投資会社は"もうけなくてもよい”のだ。
そんなところとまともに勝負して勝てるわけがないのだ。

それにしても小説内・現実共に日本の政治はあまりにもお粗末である。
新聞の政治面を読んでいても相も変わらず同じようなことばかり。
政党間の足の引っ張り合い、今の政党など政党内でさえ統制が取れていない状態で、それがどれほどの危機的状況かは認識されない。
元「子供手当て」を「児童手当」という名称にするのに何日も各党首脳が雁首揃えているの国なのだ。アホすぎる。
先の池上氏との対談にもあるが、アメリカでオバマが、フランスでサルコジが、イギリスでブラウンが選ばれたのには「経済」と言うキーワードにおけるそれぞれの理由があるのだ。
にもかかわらず「のほほん(氏の表現)」としている日本は、本当に末恐ろしい。

多分1人1人がもっと本気で将来を真剣に考えなければならない時代に来ているのだと思うが、今のメディアのあり方や政治を見ていると、きっとムリなんだろうな。
もちろん自分も含めて。

モンスター   (百田尚樹著)‏ [小説]

感動作「永遠の0」の著者が描く問題作。

畸形的とまで言えるほど醜かった女性が、整形手術を重ね「絶世の美女」として生まれ変わる話。あまりに面白くて一気に読んだ。

主人公は「バケモノ」と呼ばれる程醜く、醜いが故のあらゆる差別や不幸を一身に集める。
この描写がリアルで怖い。
例えば、子供の残酷さみたいなものは誰もが経験あるのではないだろうか。
「〇〇菌」とか言いながらぶさいくなコに触れられると大げさに嫌がっていた様な記憶は、今思うと情けないが確かにある。
そして、大人になってからも、子供のように直接言うことはなくなっていても、きれいな女性とものすごく醜い女性はすべてにおいて雲泥の差があるのは誰もが認めるところではないだろうか。
(本文にもあるが、ここで「人は顔じゃない」などときれい事を言う人は、美人か、そうでなくても醜さでさげすまれバケモノなどと呼ばれたことのない人だ)

そして主人公が整形に目覚めてからの過程も恐ろしくリアルだ。
徹底的な監修がされているだろう事は容易に想像がつく。
莫大な金額だが、お金をかけさえすればバケモノと呼ばれる程醜い人が、絶世の美女になれるということは本書を読んでいると疑いようがない。
そう考えると結構怖い気がするのは自分だけだろうか?

物語では絶世の美女になった主人公が故郷の田舎町で瀟洒なレストランを経営する。
とても田舎では似つかわしくないような、おしゃれで高級なレストラン・・・・でも、成功するのだ。
彼女があまりにも美しいから。
この事実も妙にリアルだ。

彼女は何の為に故郷へ戻ってきたのか。
復習の為?それとも・・・
予想できないラストと共に、その理由さえも謎のまま読者の心にゆだねられる。

タブーの正体!   (川端幹人著) [ノンフィクション]

「噂の真相」元副編集長による著作。
「噂の真相」ってガセも多い低俗な雑誌ってイメージだったけど、違ったのね。
失礼しました。
著者を含め、真相に迫るから実際に右翼の襲撃(これが引き金で休刊になったみたい)などもあったそう。

内容は皇室・宗教・同和問題・政治家・官僚・企業・芸能人に関するタブーの話。

と言っても、それぞれのネタ的な方(こんな真相があるよ的な)ではなく、どのようなタブーがあり、それがどのように構築されていったのか、と言う方に重点が置かれている。
ただ、その過程で当然「タブー」についての真相を書いているのだが、この本だいじょうぶなのだろうか?

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