カデナ   (池澤夏樹著‏) [小説]

芥川賞を取った「スティル・ライフ」以来、池澤氏の本はほぼ読んでいる。

カデナ=嘉手納、いわずと知れた沖縄米軍基地の町。

舞台はベトナム戦争末期、カデナの基地からきたベトナムへ爆弾の雨を降らせるために
日々飛び立つ大型爆撃機B-52.

その攻撃を無力化するためにスパイ組織を作った見ず知らずの4人の話。

戦争や当時の沖縄、米軍の話となると暗くなりがちだが、池澤氏がインタビューで
「この小説は基地の中に入っていくわけで、外からの米軍糾弾ではない。いってみれば中からおちょくる話」と語っている通り、非常に軽快に描かれている。

確かに不思議な空気感だ。

主人公の1人は判明すればどのような罪に問われるかわからないスパイ活動にまるで「バイトのように」協力するのだ。

と、言っても物語はもちろん「痛快なスパイ小説」などではない。

テーマはやはり重く、10年以上沖縄に住んでいた池澤氏の思いも詰まっているのではないかと思われる。

思えば、68年は特別な、何か日本中が熱にうなされたような年だったのではないだろうか。

ベトナムや反戦、学生運動、はたまたヒッピーやセックス、ロックンロールまで、経験はしていないが誰もがエネルギーを感じずにはいられない。

上記の主人公の1人はあの時代を象徴する20歳くらいの若者だ。

そう考えると、この物語は「68年・あの時代」の沖縄版と言えるのではないだろうか。

彼が物語の最後に言う。


「68年はおもしろい夏だったな」

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