RAIN DAYS   (浅倉卓弥著‏) [小説]

「四日間の奇蹟」著者が、デビュー前に描いていた物語。


「20代という長い間、僕はずっと霧のような雨に降り込められ、身動きすらままならずにいた」


最初の章で主人公の「僕」が語っているその言葉で、この物語の雰囲気は察しがつくのではないだろうか?
そういったモラトリアム的な小説を好まない人にはあまりお勧めできないが、個人的にはこういった雰囲気の作品は好きだ。

思うのだけど、こういう作品が嫌いって言う人って、なんだか少し「頑張りすぎてる」人が多いような気がする。
なんていうか、「俺は・私はこういう人」と思い込んでる、若しくは思いたい人というか。。。

余談はさておき。。。
風俗で働いていたワケありの佳織、その彼女の出現で主人公の「僕」の生活は急に濃密になる。
まるで春の長雨みたいだ。

と、言ってもさまざまな事件なんかが起こるわけではない。

何もなかった「僕」の生活に、生や心、誰かを愛する気持ちなどの濃密な時間が訪れるのだ。

まるで、乾いた空気を湿らせる雨のように。

その1つの象徴が音楽。

メンデルスゾーン、チャイコフスキー、そしてドビュッシーの奏でる調べが物語を彩っていく。

とてもいいなと思ったのは、佳織が風俗で働かなければならなくなった過去が最後まで明らかにならないのだ。

物語の重要なファクターであるにもかかわらず、でも「僕」にとってはそれは彼女を構成する要素のほんの1部のパーツであるかのように。

雨の日にゆっくりソファーで読みたい本。

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