日本を創った12人<前編>  堺屋太一著 [その他]

「日本の独自性を創り上げ今日まで影響を残している人物」を著者の選択により解説したもの。
何人かは正直ピンとこなかったが、文章の端々に表れる著者の知識の深さには感心する。

中でもなるほどとうなったのは聖徳太子を日本人の宗教観を創った人物として捉えているところ。
聖徳太子は日本古来の神道の時代に、インドから中国を伝い朝鮮半島を経て入ってきた仏教、中国からの儒教を習い合わせ、その後の日本人の宗教に対する習合思想を創り上げた。
その結果その後日本では新しい宗教は対立軸ではなく習合対象が1つ増えただけという捉え方、さらには「いいとこ取り」の発想となっていく。

確かに世界では新しい宗教は対立の対象となり、時には占領者となっている。
宗教による戦争も絶えない。
今まで日本史上の宗教に関わる部分では、キリスト教が世界を征服していた時代にそれをうまく利用し、また暦や航海図など利用できる部分は利用し、まさに「いいとこ取り」をした上で、且つ征服されることのなかった織田信長が一番すごい、と思っていたが、こうやって考えるとその基礎を創ったのは聖徳太子ということか。

実際こちら(欧州)を廻っているとやはりよく宗教の話になる。
そこで日本の宗教を説明する際、「仏教徒が圧倒的多数だが、実際に自分がどの派に属しているかも知らないし、自分が仏教徒であるという自覚もなく、誰かが亡くなった時に認識するくらいだ」という話をよくする。
そしてその後、「だからクリスマスも楽しめるし、盆・正月も楽しめるし、クリスチャンでもないのに教会で結婚式挙げれるし、神社に行けば神様にお願いし、寺に行けば仏様に願い事をお祈りすることが出来る」という話になる。
そう考えると便利だ。そして自由だ。
その基礎が聖徳太子の時代から脈々と続いてきたと思うと、さらに感慨がわく。
聖徳太子に感謝しよう。

ちなみにハンガリーなどは日本に近く、ほとんどの人が週末教会に行くことはないそうだ。

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都(みやこ)と京(みやこ) [その他]

まずは京都出身ということで。
京都と東京の違いを言葉・文化・歴史・食べ物、あげくは綿矢りさと金原ひとみ・冷泉家とヒルズ族まで広げて比較している本。

文体は非常に読みやすく、例も面白い。

例えば京都では冠婚葬祭や何かを頂いた際のお返しを「おため」と言うのだが、東京での「お返し」との違いを
セックス=面倒くさいし、相手が何を求めてるか読まなければならないし、イヤというのが本当に嫌なのか、もう一押しして欲しいということなのか見極めなければならないけど、互いが求めているものを与え合うことが出来ればこの上ない喜びを得られるものと、
自慰行為=あげる方も返す方も自己満足、よってあげっぱなし・貰いっぱなしでも大してお互い気にしないもの、
に例えているなど。

また面白かったのは京都をディズニーランド以上の「和のテーマパーク」としているところ。
なんでも人気テーマパークに不可欠なアミューズメント(神社仏閣・博物館などの施設)・物販(漬物・和菓子・扇子など)・飲食(懐石・甘味・豆腐などなど)・サービス(京都人の京都弁のもてなし)の4つが見事に四拍子揃っているのだそう。
さらにリピーター率を上げるための重層性、つまり季節毎のお楽しみや一見さんお断り、数年に1回しかご開帳しない仏像なども完璧とのこと。

個人的にも京都に生まれ育っていた間はどちらかと言うと都会でもなく田舎でもない中途半端で好きになれなかったのだが、一度京都を出て戻ってみると「なんて素晴らしい街なのだろう」と感動すら覚えるようになったので、そういう見方もあるのか、と妙に納得。

とか、言いつつ今は京都を遠く離れ欧州に暮らしているが、京都の心は忘れてません。
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